「絞り」や「F値」という言葉は聞いたことがあっても、実際に何がどう変わるのかは分かりにくいですよね。
私も最初は、F値の数字が小さいほど明るい、という関係すら逆に覚えていました。
でも、絞りは写真の仕上がりを大きく左右する、とても面白い設定です。
明るさだけでなく、背景のボケ具合まで自分でコントロールできるようになります。
先に結論をお伝えします。F値は「明るさ」と「ピントの合う範囲(ボケ)」を同時に操る設定です。F値が小さいほど明るく背景がボケ、大きいほど暗く全体がくっきりします。
この記事では、その仕組みから、シーン別の目安、絞り優先モードの使い方までを、初心者向けにやさしく解説します。
◎同じ被写体を同じカメラとレンズでF値だけ変えて撮影してみました


絞り(F値)とは?
レンズの中には「絞り羽根」という、光の通り道の大きさを変える部品があります。
この羽根を開いたり閉じたりして、カメラに取り込む光の量を調整するのが「絞り」です。
その開き具合を数字で表したものが「F値」です。
ここがいちばん間違えやすいのですが、F値の数字が小さいほど、絞りは大きく開いて光をたくさん取り込みます。F1.8は大きく開いた状態、F16は小さく絞った状態です。
ちなみに、レンズが開ける限界のF値を「開放F値」と呼びます。
この数字が小さいレンズほど「明るいレンズ」と言われ、暗い場所や大きなボケに強くなります。
F値で写真はこう変わる
F値を変えると、主に「明るさ」と「ピントの合う範囲」が変わります。
表で整理してみましょう。
| 項目 | F値が小さい(F1.8など) | F値が大きい(F11など) |
|---|---|---|
| 明るさ | 明るい(光をたっぷり取り込む) | 暗い(光が減る) |
| ピントの合う範囲 | 浅い → 背景が大きくボケる | 深い → 手前から奥までくっきり |
| 向くシーン | ポートレート・子ども・暗い室内 | 風景・街並み・集合写真 |
「被写界深度」=ピントの合う範囲
少し専門的な言葉ですが、ピントが合って見える範囲のことを「被写界深度」と呼びます。
F値を小さくすると被写界深度が浅くなり、被写体だけにピントが合って背景が大きくボケます。逆にF値を大きくすると深くなり、手前から奥まで広くピントが合います。
「背景をボカして主役を引き立てたい」ならF値を小さく。
「景色全体をすみずみまで写したい」ならF値を大きく。これが絞りのいちばん面白い使い方です。
ボケはF値だけじゃない——焦点距離と距離も効く
ここは多くの解説が省きがちな、でも大事なポイントです。
背景のボケは、F値だけで決まるわけではありません。次の3つの組み合わせで決まります。
- F値:小さいほどボケる
- 焦点距離:長い(望遠)ほどボケる
- 被写体との距離:近づくほど、そして背景が遠いほどボケる
だから、広角レンズでF2.8まで開けても意外とボケず、望遠レンズならF4でもよくボケる、ということが起こります。
私が50mm f/1.8で子どもに思いきり近づいて撮ると、背景がとろけるようにボケます。これはF値の小ささだけでなく、寄れる距離と焦点距離も効いているんです。
「F値を小さくしてもあまりボケない」と感じたら、被写体に近づく・背景を遠ざける・望遠側を使う、を試してみてください。
焦点距離とボケの関係は焦点距離の解説でも詳しく触れています。
シーン別・F値の目安
「結局いくつにすればいいの?」という方へ、目安をまとめます。
まずはここから始めて、撮り比べて感覚をつかんでください。
- ポートレート・子どもを際立たせる:F1.8〜F2.8(背景を大きくボカす)
- 日常のスナップ:F4〜F5.6(ほどよくボケて扱いやすい)
- 風景・街並み(全体くっきり):F8〜F11
- 夜景・光芒(光のすじ):F11〜F16(三脚があると安心)
ひとつ注意点があります。F値は大きくするほどシャープになるわけではありません。
絞りすぎる(F16〜F22あたり)と「回折」という現象で、かえって少し甘くなることがあります。多くのレンズが最もシャープになるのは、F5.6〜F8あたりと言われます。迷ったらこの範囲が無難です。
絞り優先モード(A/Av)を使いこなす

絞りを練習するのに、いちばんおすすめのモードが「絞り優先モード」です。
ダイヤルの「A」(メーカーによっては「Av」)がそれです。
このモードでは、自分はF値だけを決めればよく、明るさのバランス(シャッタースピード)はカメラが自動で合わせてくれます。
「ここは背景をボカしたいからF2.8」と決めるだけ。露出はカメラ任せなので、初心者でも失敗が少なく、絞りの効果に集中できます。
慣れてきたら「露出補正」で明るさを少し足したり引いたりすると、狙いの明るさに追い込めます。
まずは同じ被写体をF2.8とF8で撮り比べて、ボケの違いを体感するのがいちばんの近道です。
シャッタースピード・ISOとの関係
絞り(F値)は単独で働くわけではなく、シャッタースピード・ISO感度と三つでバランスを取り合っています。
これは「露出の三角形」と呼ばれます。
ざっくり言うと、F値を大きくして光が減った分は、シャッタースピードを遅くするか、ISO感度を上げて補います。
絞り優先モードを使えば、この調整はカメラがやってくれるので、まずは絞りの効果だけに集中して大丈夫です。3つの設定の関係をまとめて知りたい方は、カメラ初心者が最初に覚える3つの設定をどうぞ。
よくある質問
Q. F値は小さいほどいいの?
用途によります。背景をボカしたいときや暗い場所では小さいF値が有利ですが、風景を全体くっきり写したいなら大きいF値が向きます。
「良い・悪い」ではなく、撮りたい表現に合わせて選ぶものです。
Q. 背景をもっとボカすには?
F値を小さくするのに加えて、被写体に近づく・背景を遠ざける・望遠側で撮る、を組み合わせると効果的です。
F値だけに頼らないのが、大きなボケを作るコツです。
Q. 風景はどのF値がいい?
F8〜F11が定番です。手前から奥までしっかりピントが合います。
ただしF16以上に絞りすぎると回折で少し甘くなることがあるので、欲張りすぎないのがコツです。
Q. 絞り優先モードは難しい?
いいえ、むしろ簡単です。F値だけ決めれば、明るさはカメラが自動で合わせてくれます。
絞りの練習に最適なモードなので、まずはここから始めてみてください。
まとめ:F値が分かると、写真は一気に楽しくなる
絞り(F値)は、「明るさ」と「ボケ(ピントの合う範囲)」を操る設定です。小さくすれば明るく背景がボケ、大きくすれば全体がくっきり。
そしてボケは、F値・焦点距離・被写体との距離の組み合わせで決まる、ということも覚えておいてください。
まずは絞り優先モードで、同じ被写体をF2.8とF8で撮り比べてみましょう。
その違いを目で見た瞬間、絞りは一気に「自分の表現の道具」に変わりますよ。