Nikon Z8という、静止画・動画ともに妥協しない性能を持つハイブリッド機を手にした後、大きな悩みに辿り着いてしまいました。
それは、「この4,571万画素という圧倒的な情報を、どのレンズで受け止めるべきか」という問題です。
比較対象は、現代の万能レンズとして不動の地位を築いた「NIKKOR Z 24-120mm f/4 S」。
そして、Nikonが100年を超える歴史の中で培った光学技術の粋を集め、最新の設計思想で「大三元」を再定義した「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II」。
価格差は約15万円。
焦点距離の差は50mm。
F値の差は1段。
両レンズをZ8に装着し、多くのシャッターを切ってきた実体験をもとに、スペック表の裏側にある「光学の真実」を圧倒的ボリュームで徹底解説します。
この記事が、あなたのレンズ選びの終着駅になることを約束します。
この記事の深掘りポイント:
・Z8の超高画素を活かしきる「解像力」のピーク特性
・最新のII型大三元が「情報パネル」を廃止した真の理由
・ナノクリ・アルネオ・メソアモルファス……コーティングが生む「ヌケ」の差
・最短撮影距離と最大撮影倍率がもたらす「表現の自由度」
・後悔しないための「用途別・最終決断フローチャート」
1. 【光学性能の深掘り】Z8の4,571万画素を使い切るということ
Z8のセンサーは、レンズのわずかな甘さも許容しません。
4,571万画素という情報量は、設計の甘いレンズを使うと、ピクセル等倍で見た時に「眠い描写」として露呈してしまいます。
この2本は、その高いハードルをどう超えているのでしょうか。
① 24-70mm f/2.8 S II:収差を「ねじ伏せる」最新の光学系

NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S II
最新のII型は、旧型(I型)からレンズ構成を根本から見直しています。
EDレンズ、SRレンズ、そして非球面レンズを贅沢に配置し、特に絞り開放付近でのサジタルコマフレア(点光源が滲む現象)を徹底的に排除しています。
夜景のスナップで画面端にある街灯が、滲むことなく点として正しく写る。
この当たり前のようなことが、このレンズでは極めて高い次元で達成されています。
Z8の解像度をもってしても、四隅の描写が流れることはありません。
② 24-120mm f/4 S:ズーム全域で「平均点」を突き抜ける

NIKKOR Z 24-120mm f/4 S
一方で、24-120mm f/4 Sの凄さは、5倍という高倍率ズームでありながら、全域で単焦点レンズに迫る解像力を維持している点にあります。
特に「f/8」まで絞り込んだ際の風景描写は、f/2.8 S IIと比較しても、中央付近ではブラインドテストで判別が困難なほどです。
「便利ズーム=画質が悪い」というかつての常識は、Zマウントのこのレンズによって完全に破壊されました。
2. 【エルゴノミクスの進化】なぜ「情報表示パネル」は消えたのか?

Ⅱ型では上部の情報表示パネルが廃止された
多くのユーザーが驚いたのが、Z 24-70mm f/2.8 S IIにおける「情報表示パネル」の廃止です。
旧型や、他の一部のS-Lineレンズに搭載されていた液晶パネルが、なぜ最新のフラッグシップ標準ズームから消えたのでしょうか。
プロの現場が求めた「究極の道具」としての回答
理由はシンプルかつ明確です。「徹底的な軽量化」と「堅牢性の向上」。
そして、Z8/Z9というカメラ本体のEVF(電子ビューファインダー)性能が飛躍的に向上したためです。
パネルを廃止することで、鏡筒の複雑な配線と部品を削減し、約700g台という驚異的な軽量化を実現しました。
Z8との組み合わせにおいて、この数十グラムの差が「1日中振り回せるかどうか」の境界線になります。
また、故障リスクのある電子パーツを減らすことは、過酷な現場での信頼性に直結します。
ギミックに頼らず、純粋な「撮る道具」としての完成度を高める。これこそがNikonがII型に込めた「硬派な進化」の形です。
指先で覚える操作性:L-Fnボタンとコントロールリング
パネルはなくなりましたが、操作性はむしろ向上しています。
独立したコントロールリングには「絞り」や「露出補正」、L-Fnボタンには「AFエリアモード」を割り当てることで、ファインダーから目を離すことなく、文字通り「手の一部」として機能します。
Z8のカスタマイズ性と組み合わせることで、もはやメニュー画面を開く必要すらなくなります。
3. 【表現力の決定的な差】ボケの質とヌケの正体
ここからは、写真の「雰囲気」を決定づける要素について深掘りします。
f/2.8が生む「立体感」という魔法

f/4とf/2.8
数値上はわずか1段の差ですが、背景のボケ量には劇的な違いが現れます。
特に70mm付近でのポートレート撮影において、主題を背景から浮き立たせる力はf/2.8 S IIが圧倒的です。
ボケの輪郭が硬くならず、とろけるように消えていく。
この「質」こそが、大三元レンズを「作品用」たらしめている理由です。
コーティング技術の極致:最新の「ヌケ感」
最新のII型には、ナノクリスタルコートとアルネオコート、さらに最新の反射防止技術「メソアモルファスコート」などが投入されています。
これにより、逆光時のコントラスト低下が極限まで抑えられています。
夕暮れ時の撮影で、強い太陽光を画面内に入れてもシャドウ部が潰れず、光の階調が豊かに残る。
この「透明感」は、一度体験すると戻れない魔力を持っています。
4. 【現場での使い勝手】最短撮影距離と120mmの恩恵
描写性能の純度ではf/2.8 S IIに軍配が上がりますが、「撮れる写真のバリエーション」では24-120mm f/4 Sが圧倒します。
「寄れる」ことの強み:驚異の最大撮影倍率

24-120mmは、ズーム全域で最短撮影距離35cmを実現しています。
最大撮影倍率は0.39倍。これはハーフマクロに近い数値です。
足元の小さな花、テーブルに並んだ料理、製品のディテール……。
レンズ交換なしでここまで寄れるレンズは、他社を見渡しても稀有な存在です。
24-70mm f/2.8 S IIも十分に寄れますが、この「あと少しの踏み込み」ができるかどうかで、作品の迫力は変わります。
望遠端120mmがもたらす「背景の整理」
70mmではどうしても背景が整理しきれず、雑多なものが写り込んでしまうシーンでも、120mmまで伸ばせば不要なものを画面外に追い出し、主題を際立たせることができます。
旅行スナップにおいて、「これ1本でいい」と確信させてくれるのは、やはりこの50mmの余裕です。
5. 【最終判断】あなたはどちらを選ぶべきか?
これらを踏まえ、失敗しないための判断基準をまとめました。
24-120mm f/4 S を選ぶべき方
- 風景・旅行・ドキュメンタリー: 荷物を最小限に抑えつつ、最大限のシャッターチャンスをものにしたい。
- マクロ的な表現も楽しみたい: 花や小物、料理などのクローズアップ撮影が多い。
- 動画撮影のメインレンズ: 軽量さを活かしてジンバル運用を楽にしたい。
24-70mm f/2.8 S II を選ぶべき方
- ポートレート・商業撮影: 最高峰のボケ味と立体感が必要不可欠。
- 室内や暗所での撮影が多い: 1段分の明るさが、ノイズの少ない綺麗な仕上がりに直結する。
- 最高峰の画質に妥協したくない: Z8の性能を「光学的な限界」まで引き出したい。
まとめ:Z8という名器にふさわしい相棒を
レンズ選びに唯一無二の正解はありません。
あるのは、あなたの「撮りたい」という情熱にどちらが応えてくれるか、という事実だけです。
私は、この2本を使い分ける中で気づきました。
「記録」を「記憶」以上に美しく残したいなら24-120mm。
そして、「感情」を「光」とともに閉じ込めたいなら24-70mm f/2.8 S IIだと。
あなたは次の週末、どちらのレンズでシャッターを切りたいですか?
どちらを選んでも、Nikon Zマウントが切り拓く「新しい写真の地平」が、あなたの想像を超える世界を見せてくれるはずです。
さあ、Z8という最高の相棒に、ふさわしい瞳を与えてあげましょう!